沖縄を代表するお酒
泡盛の作り方と定義
泡盛の歴史を簡単におさらい
沖縄を代表するお酒、泡盛。
起源は15世紀前半。中国からシャム(タイ)を経由して酒の蒸留技術や知識が伝わり、琉球でもお酒造りが始まったとされています。 ※諸説あります
やがて泡盛は外交の場に欠かせない貴重かつ重要な品となり、17世紀には琉球王朝から認められた家以外での酒造りが禁止され、失敗した者には島流しの刑、密造者には極刑が下ることもあったようです。
当時酒造りを認められたのが、首里三箇と呼ばれる首里城周辺の鳥堀、赤田、崎山の3つの地域で、厳重な管理の下で泡盛づくりが行われていました。
第2次世界大戦により沖縄の酒造所は壊滅的なダメージを受けますが、奇跡的に見つかった原料を元に各酒造所が協力して沖縄の泡盛造りを再興し、現在へと至ります。
――― この記事の内容 ――― ●泡盛が出来るまで(製造手順)
●泡盛の定義
●泡盛の蒸留方法
●泡盛が出来るまで(製造手順)
●泡盛の定義
●泡盛の蒸留方法
泡盛が出来るまで
泡盛作りの手順
1,洗米・蒸米
泡盛の原料は米。酒造所によって洗米方法も異なり、完成するお酒の風味に影響します。洗米後の米は加工しやすいように蒸す工程に入ります。
2,米麹造り
蒸された米に黒麹菌を加えて米麹を生成。米に含まれるデンプンを糖分に変えていきます。泡盛造りの肝となる部分で最も気を遣うと言われる工程。
3,仕込み
出来上がった米麹に酵母菌と水を加えもろみを生成。アルコールを発酵させます。
4,蒸留
もろみを蒸留し、原酒を抽出します。
5,風味の調整
原酒に加水したり寝かせることで、風味の調整を行います。ここで行う調整は主に飲みやすくするものがほとんどです。
泡盛の定義
1,黒麹菌を使用
一般的にお酒を造る際には麹菌を用います。麹菌の役割は原料のデンプンを糖分に変えること。原料となる米や麦、芋に含まれるデンプンを糖分に変えることで、酵母がアルコールを生成するのを助けます。
麹菌は様々なお酒造りに用いられていて日本酒には黄麹、焼酎には白麹が使われることが多く、泡盛に関しては黒麹が使用されています。
麹はそれぞれに特徴があり、黄麹はあっさりとした軽口の仕上がりになることが多く、黒麹は重厚な味わいになる傾向があります。白麹はその中間をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
泡盛づくりに黒麹を用いる最大の理由は高温多湿の沖縄の環境に最も向いているというコト。黒麹は多くのクエン酸を生成する為、雑菌の繁殖や腐敗を防ぐ力があります。
今でこそ衛生環境の整った工場での製造が行われるようになっていますが、琉球王朝時代にどこまでの環境が整っていたのかはわかりません。
2,原料に米を使用すること
これは有名な話ではあると思いますが、泡盛の原料には米を使用します。
泡盛=タイ米というイメージも強いかもしれませんが、原料の品種にまで制限はなく、近年では日本米を使用した泡盛も増えてきています。原料米が変わるとその風味も大きく変わってくるのは面白いところですよね。
タイ米が多く使われてきた理由としては、粘り気が少ないタイ米は黒麹との相性が良く、お米一粒ずつに満遍なく染み渡りやすいこと、アルコールの回収率が高いことがあげられます。
3,全麹仕込み(一次仕込みのみ)
米に黒麹を混ぜることで出来る米麹と加水した水のみで作ること(一次仕込みのみで作ること)。日本酒や焼酎のように、主原料を追加したり更に加水することはありません。
これも、二次仕込みを行うことで濃度が下がり雑菌の繁殖につながる恐れがあることから、一度の仕込みで一気にアルコール度数を上げて作り上げる、先人の知恵によるものなのです。
4,単式蒸留である
アルコールの蒸留には単式蒸留と連続式蒸留がありますが、簡単に言うと蒸留を1回のみで行うか、2回以上行うかということ。
単式蒸留では、一度で出てくる成分全てを取り込むために風味豊かなお酒になります。モルト・ウイスキー、ブランデーなども単式蒸留で造られたもので、濃厚な味わいのモノが多いことがお分かりいただけると思います。
連続式蒸留では、複数回蒸留を行うことでより純度の高いお酒を得ることが出来ます。こちらはウォッカやスピリッツ系のお酒があげられ、シンプルな風味のお酒が多いのが特徴です。
蒸留の方法
常圧蒸留・減圧蒸留
泡盛の製造過程にある蒸留について単式蒸留という方法を紹介しましたが、近年では様々な工夫によってテイストを変える動きがあります。
通常行われるのは常圧蒸留と言って、外気と同じ圧力でもって温度を上げて抽出する方法。原料そのままの風味をしっかりと抽出させたいときに用いられます。
近年増えたのが減圧蒸留という方法。名前の通り蒸留器内の圧力を下げることで沸点を下げて抽出を行います。富士山の山頂だと90℃に達する前にお湯が沸騰するというのは有名な話ですよね。
低温で沸騰させることで、よりすっきりした飲みやすい成分が抽出されやすいという長所があります。実際の銘柄だと残波が減圧蒸留酒で知られていますが、凄く飲み口の軽い泡盛ですよね。
泡盛の奥深さ
酒造所によって全然違う!
ここまで紹介してきた知識は一般的なお話で、実際には蒸留の方法だけでも様々あり、酒造所によってもその手法は異なってきます。
原料米や洗い方、麹の使い方、温度管理など、全ての要素が複雑に絡み合ってお酒が出来上がります。
その多様さは泡盛に限ったことではありませんが、一見同じように作っているように見えても、ひとつの要素の違いでまるっきり異なる味になってしまうこともあります。
近年の傾向は飲みやすい泡盛造り。新しく出ている商品についても今後紹介していきたいと思います。