ハワイと並ぶ観光地になった沖縄
沖縄の観光公害を解決!
観光客数はハワイ並み
戦後数万人だった沖縄への入域観光客数は、アメリカから日本へと変わった1972年には44万人余り、海洋博覧会が開催された1975年には100万人を超え、2019年には遂に大台1,000万人を突破するなど、その人数はあのハワイと肩を並べるまで成長してきました。
沖縄観光での楽しみと言えば、水族館、海、リゾートホテル、食事、買い物、体験。。。と多種多様。日本とは異なる街並みを楽しみにしている人も多いと聞きます。
しかし、観光客の増加と共に浮き彫りになったのが社会基盤の拡張が追い付いていないこと。いわゆる観光公害(オーバーツーリズム)の発生。本来地域が潤うはずの観光ですが受益は末端までの広がりに欠け、全ての人からは歓迎されていないのも事実です。
今後更なる発展の為にも避けては通れない観光公害対策。そこに一石を投じる議論を行ってみたいと思います。
――― この記事の内容 ――― ●沖縄観光の課題
●ゾーニングとは
●沖縄版ゾーニング
●国際通りをゾーニング
●課題解決型の観光の輸出
●沖縄観光の課題
●ゾーニングとは
●沖縄版ゾーニング
●国際通りをゾーニング
●課題解決型の観光の輸出
沖縄観光の課題
住民生活に影響を与える観光産業
沖縄は車社会と言われ、通勤・帰宅の時間帯を中心に慢性的な渋滞が起き、そこに観光目的の車が入り込み更なる渋滞を引き起こしています。
またバスレーンや一方通行など道路標識はあるものの、不慣れな土地ならではの規制を見落としがちな問題もあります。
観光バスによる問題も深刻でこちらは渋滞よりも停車位置。3台、5台と連なる観光バスがバス停や道路上に停車していては生活圏の人間としては大迷惑。首里城周辺では何年も前から地域住民との軋轢も生まれていて、喫緊の課題の一つ。
また国際通りにおいても地元の生活に密に関連している幹線道路を塞ぐ駐車も起きていて、路線バスや一般車両・歩行者にも影響が出ている現実があります。
観光公害化
日常生活に視点を変えると、住民の生活圏に観光客が入り込むことがお互いのストレスを生み出しています。買い物、レジャーはじめ、住民の生活圏内に観光客が足を踏み入れることで地元民の生活様式が変わってしまい、観光に対するアレルギーを持ってしまう人がいることも考慮しなくてはいけません。
「足を踏み入れる」と述べましたがそのこと自体が問題なのではなく、受け入れる側の容量(キャパシティ)を超えてしまう様子が多々見られるようになってきているのです。
これらの課題を解決する一つの手段として“ゾーニング”という考え方を提唱したいと考えています。
ゾーニングとは
ゾーニング(zoning)
1,建築などの設計において、用途などの性質によって空間を区分・区画すること。
2、都市計画において、いくつかの地域を区分し、それぞれの地域で用途・建築形態等を制限すること。
広辞苑より
これだけでわかってしまうと思いますが、一言でまとめると区分・区別すること。これは建築に限らず様々な業界で使われる言葉です。
例えば小売業界であれば商品ジャンルごとに売り場を区切ったり、売れ筋によって区切ることをゾーニングと言ったり。企業オフィスであれば機密情報のレベルに応じて立ち入り制限を決めるゾーニング。病院においては病原体や医療従事者の立ち入りを区分するゾーニング。
観光業界で言われるゾーニングは、そこに住む住民が活動する区域と観光で訪れる人の活動域を分けること。
住民には生活に必要な買い物、娯楽施設を楽しむことが出来るように所謂“日常”を整備し、観光客に対しては海や観光施設、買い物の場所を整備して“非日常”を感じることが出来る場所を整備する。
それぞれに必要なサービスを提供することで、お互いに快適な生活・観光を送ろうという取り組みです。
メリット
住民の生活区域、観光地それぞれに特化した街づくりを行うことが出来るので、互いに干渉することなくそれぞれの満足度を上げることが出来ます。
日用品の買い物、娯楽施設を住民の生活圏内に整備することで、過度な観光客との接触を避けるようにする。住民が求める“日常”を快適にすることが出来る。
逆に観光地と空港や港湾との定期便を整備したり、観光客が求める施設や景観の整備をすることで満足度を上昇させることが出来る。観光客が求める“非日常”をより障害が少なく体験することが出来るようになる。
デメリット
メリットが多いように感じるゾーニングですが、一番の課題は計画的な街づくり・都市計画を行う必要があり、期間・費用共に大きくかかってしまうこと。
今の街並みを大きく変えてしまう必要もあることから簡単には踏み出せませんが、今後さらに発展させていくためには一度真剣に考えないといけない事案だと思います。
世界のゾーニング事例
世界に目を向けると、ハワイやスペインといった世界有数の観光地でゾーニングが成功している事例があります。
条例によって生活圏と観光に用いる区画を分けたり、リゾート開発におけるルールを定めることで地元住民と観光客それぞれの利益をより大きくしているのです。
沖縄版ゾーニング
沖縄観光に求められること
沖縄県の調査によると、観光目的の上位は海・ビーチリゾート、首里城をはじめとする世界遺産群、美ら海水族館や琉球村といった施設への訪問で、多くの人が訪れる場所はある程度決まっています。
その施設をより観光客向けに特化して需要を取り入れていけば良い。そして空港やクルーズターミナルとの定期便を運行し、楽に移動が出来るようにする。移動に対するストレスや不安を取り除くだけで、出先でのマイナス要素は大きく抑えることが出来るのではないでしょうか。
リゾート地の棲み分け
近年、新しく課題にあげられているのが石垣や宮古といった離島での軋轢。急な観光客増加により受け入れ側が対応出来てない部分もあり、住民からの苦情が急増しています。
街中を水着で歩く、地元住民の生活・文化を否定する行為、といった問題も起きていて、観光客向けのショッピングセンター、観光客向けの飲食店街といった整備も必要かもしれません。
一方で、外的要因に大きく左右される観光業に振り切った街づくりは、コロナ禍のように大きく下振れる可能性もあり、その対策を考える必要もあります。
国際通りをゾーニング
国際通りをより観光に特化する
国際通りに関しても更に観光に特化した構造を目指しても良いと思うのです。地元の人々と融合出来ると一番理想的なのですが、国際通りから地元民が離れていった経緯を考えると、今後も大型ショッピングセンターや遊興施設に対抗した設備を整え、更に集客することはかなり難しいと考えています。
国際通りを訪れる観光客は買い物・飲食を目的とする方が多く、今以上に多くの種類のショップを並べることでブランディング・差別化が出来るものと考えます。
更に、日本でありながら日本ではない、独特の空気感を楽しみにしている方も多いので、街路や建物の整備によってその景観も深化させることが出来るのではないでしょうか。
北谷町のデポアイランドがまさにその成功例。テーマパークのような街並みと欧米のリゾート地のような雰囲気は県内外から多くの人が訪れています。
国際通りの交通整備
もう1点、国際通りで検討するべき事案として一般車両の通行規制について。
国際通りの交通量はかなり多く、路上駐車や交差点の多さもあって慢性的な渋滞発生ポイント。バスのダイヤは乱れ住民、観光客双方に悪い影響が出ています。
一般車両の通行を規制することで通りの安全性を確保し、周辺店舗への配送車への設備を整えたり、公共交通の利用を促すという施策につながると期待しています。
近くには那覇バスターミナルやモノレール駅もあるので、これらを活用する方法もあるかもしれません。
課題解決型の観光の輸出
観光そのものをビジネスに
多くの課題に直面している沖縄だからこそ、その伸びしろは大きい。
解決手段を商品化し、沖縄モデルとして観光公害(オーバーツーリズム)の解決ソリューションを世界各地に提案できるようになるかもしれない。そう考えると観光以外の分野で沖縄の資源となりうるはずです。
観光そのものだけではなく、観光を資源としたコンサルティングやシンクタンクとして資源の輸出につながることが大いに期待できます。
是非皆様のご意見もお聞かせください!!